数日後。母は元気になり、日常生活を送っている。その様子に俺は心から安心した。

そして俺も父も無事、仕事が見つかった。父は学校の事務員らしい。俺は力仕事だ。スーパーの裏仕事だ。

母にはあまり仕事をさせないようにした。もちろん、今の仕事を強制的に辞めさせたわけではない。

強制的に辞めさせてしまえば、母が嫌がると思ったからだ。だけど、俺は仕事を辞めてほしいと思っている。また過労で倒れたりしたら、今度こそ俺の心臓が止まる気がするから。


「あれ……?」

仕事帰り。いつも通り、俺は暗い夜道を歩いていた。

「廉………」

「司くん!どうしたの?」

「どうしたって…?」

「どうして司くんがここにいるの?」

「仕事帰りだよ」

質問攻めしてくる廉。不思議に思いながらも、上目遣いで聞いてくるので素直に答えてしまった。

まぁこれくらい素直に答えても問題はないだろう。

「え?仕事って……こっちに住むの!?」

「まぁな。お袋が倒れたから……」

「あ、そ…うなんだ………」

悪いこと聞いたと思ったのだろうか、廉は肩を落としてバツが悪そうにしていた。

「お前が気にすることじゃないよ。お袋は元気だから」

「…ホント!?なら良かった!」

人の幸せを心から願う彼は、自分の幸せを願ったことないのだろうか。

とても嬉しそうに笑う廉。その姿を見て俺は笑った。

でも心の奥底では“何か”が引っかかった。

それを知るのは少し先のお話──