司様は私のことを見てくれない。ずっと廉くんだけを見てる。

そもそも男同士なのにどうやって恋に落ちるのよ。

同性よ!?気持ち悪いわ!!

あの時もそうだった──



廉くんに好きな人を聞いた。もちろん私だと答えてくれた。でも答えるのに数秒かかった。即答で私だと答えてくれなかった。

だから聞いた──聞いてはならないとわかっていても。

「黒森くんのこと好きですか?」

すると彼は少しだけ頬を赤くして、数秒後に答えてくれた。少しだけ目を逸らして。

「“友達として”ね……」

その時の表情は物凄く悲しそうだった。まるで失恋した人みたいな──

その時、知った。廉くんも司様に恋してるんだって。

私だって司様に恋してる。だから同じように恋してる人はわかる。

廉くんが司様に恋してるってわかった瞬間、私に勝ち目なんてないと思った。だから本人にこのことを伝えて廉くんを諦めさせて別に人を好きになるようにしてみた。

結果は言わずとも──

私は何をしてたんだろう。好きな人に振り向いてもらうためにあらゆる手段を使ったはずなのに実らない。

最初からわかってた。私の恋はいつだって実らないことを。

それでも足掻き続けた。いつか実るって信じて。いつか報われるって信じて。

初恋も実ならなかったなぁ。

次に恋した人も親友が好きになってて実ならなかった。

そのまた次も………そのまた次も………その後も、その後も……ずっと実ならなかった。

今回こそは実ると信じた。だから廉くんに告白した。司様のことを知らなかった時は廉くんのことが純粋に好きだった。告白してOKがもらえた時、心から喜んだ。

司様に出会った時。この人は私の運命の人だ、って舞い上がった。

イケメンだし優しいし、私のドタイプの人間だわ。そう思った。

廉くんから司様に乗り換えてやろう。そう思った。