「え?」
「え?・・・今、僕の口から何か聞こえた?」

僕の問いに彼女は頷いて、ゆっくりと口を開く。

「・・・好きって、そう言ってたよ。律くん」

誤爆。無意識に口から「好き」が溢れていたらしい。それも当の本人の目の前で。

ピシャリと氷のように固まった僕に、すずちゃんは頬を赤く染めながら視線をそらす。

一応僕だって告白のシチュエーションを考えたり、どう伝えるか言葉を選んだりしていた。一世一代の告白だから気合い入れて練習してきたのに。それなのに、変わりばえもしない屋上で口走るだなんて。

「えっと、今のは」

適当に誤魔化してその場の凌ごうとした僕。

「もう一回、言って?」

それを止めたのは、すずちゃんだった。

「お願い律くん。もう一回、言って欲しい」

僕はごくりと唾を飲み込む。

これは、期待をしてもいいのだろうか。

そろりと顔を上げると、すずちゃんの瞳の中に自身の姿が映り込む。望んでいたものが、手を伸ばしたらすぐにでも捕まえられる。

差し迫ってきた緊張感に僕は、深く、腹の奥底から、深呼吸をした。

そして、僕は口を開く。