「律くんはどうだった?」
「何とか全部85点以上はいったよ。多分この前の全国模試の結果も大丈夫だと思う」
「その顔は随分自信がありそう。きっとN大もA判定だね」


クスクスと笑うすずちゃん。

好きだなぁ。心の中で呟いたその言葉は、今日も彼女に届くことはない。


「先生に驚かれたよ。お前もN大かって」
「もっと上の大学目指せって?」
「うん。断ったけどね」


つまり、まだ僕は彼女に気持ちを伝えきれずにいた。

タイミングを見計らって告白しよう。そう思いながら過ごしていた僕はここまでズルズルと引っ張ってきている。

流石に嫌われてはいないと思うが、果たして彼女が僕のことを男として意識してくれているのだろうか。

そう思わざるを得ないシチュエーションが頭を霞む。

間接キスに恥じらいひとつなかったり、暑いからとカーディガンを脱いでワイシャツになったり、一緒の大学に行けたら嬉しいなって喜んだり。無自覚の行動なのか逆に僕に脈ありだと伝えてくれようとしているのか。

つまり、思わせぶりな行動に僕は1人でてんやわんやしていた。