「私はね、律くんが思っているほど良い子じゃないんだよ」
「いつも良い子でいなくてもいいんじゃない?」
「みんなにがっかりさせちゃわないかな?」
「じゃあ僕の前では良い子じゃないすずちゃんで居てよ」


告白するには何かが足りない、今ではない。そう思っていたけれど、その“何か”が今はっきりとした。

彼女の良いところばかり見ていて、悪いところを全然知ろうとしなかったのだ。

結局すずちゃんの作り上げた仮面ばかりを追いかけていて、その裏に隠れた本当の表情を知ろうとしていなかった。

でも追いかけたからこそ、新しい一面を見つけたこともある。


「私、結構気分屋だし面倒臭がりなんだ」
「全部一生懸命にならなくても良いよ」
「人付き合いも苦手だし、友達少ないんだよね」
「僕はすずちゃんと一緒にいてつまらないなんて思ったことないよ」


ただの同級生だった時も、友達になってからも、僕の毎日はきらきらと輝いていた。毎日夢心地だった。

新しい一面を知るたびに、好きの気持ちは膨れていって、大好きになっていった。

でも彼女の弱みを知った僕は、昨日よりも今日の方がもっと大好きだと胸を張って言える。

そして大好きから、それは愛しいに変わっていく。

何もかも全部ひっくるめて日高すずという人物を愛しいと思った。


「どんなすずちゃんでも、僕はすずちゃんの味方だからね」


どんな楽しい声でも、どんな悲しい声でも、全部拾い上げていく。




この日から僕は、日高すず肯定マシーンになろうと自分自身に誓った。

その役目を神様が認めてくれるのならば、持てる限りの全てを懸けてすずちゃんを幸せにしたいと、そう思う。