「頼まれ事を断れないくらいに優しくて責任感があることも、勉強して努力し続けていることも、将来を見据えて進路を決めていることも」


この学校の誰よりもすずちゃんのことを理解しているという自負があった。

でも、彼女の内側まで理解していなかった。

人間なんだから出来ないことや苦手なことがあって当然なのに、僕も日高すずという人物に完璧を求めすぎた生徒にすぎなかったのだ。


「それにテストが出来て当たり前じゃなくて、日高さんが頑張っているからだよ」
「うん」
「周りの人の期待を裏切らないようって頑張っているのも、僕は知っているから」
「うん」


でも、今の僕なら分かる。

日高すずという人間を、今の僕ならばするすると紐解いていくように暴いていける。


「すずちゃんのこと全部、知っているから。僕だけじゃダメ?」
「・・・ううん、ダメじゃない」
「あっごめん、すずちゃんって馴れ馴れしく、」
「ふふっ良いよ全然」


ありがとう、律くん。そう言って見せてくれた笑顔は、今まで見てきて中で1番輝いていて可愛くて綺麗なものだった。