こんなにも勉強して努力をしていることを、きっと周りは思っている以上に軽んじている。

だから「私も日高さんだったら」と軽く言えてしまうのだ。

その言葉に彼女が傷ついていることを知らずに。


「じゃあ頑張っているところを見せつければいいのかって、そういう話でもないんだけどさ」
「うん」
「でも何だかすっごい疲れちゃった。全部。勉強も、良い子でいるのも全部。去年はあんなに頼られて嬉しかったのになぁ」


そう言って力なく笑う彼女。廊下や教室で見掛けたすずちゃんはいつも笑顔で元気だったけれど、その中は脆くてボロボロだったのだ。

ずっと入学当初から見てきたのに、どうして気づけなかったのだろう。

もっと早く気づいていたら、すずちゃんは涙を流すことも無かったのだろうか。


(いや、違う。気付かせないように、それもすずちゃんが頑張ってきたんだ)


心配させないように、と。期待を裏切ることで積み重ねてきたものが崩れ、周囲の人々を残念に思わせないようにと。

ずっと彼女は葛藤してきたに違いない。


「ごめんね、月島くんにこんな愚痴言っちゃって。迷惑だったよね」
「僕はちゃんと知ってるよ」
「月島くん?」