「ところで月島くんは電車通学?」
「うん」
「一緒に帰ろう。あ、もしかして何か用事ある?」


僕は即座に「ない」と返す。いや、もし何か用事入っててもないって答えるけれど。


(デートのお誘い・・・!)


まさか彼女の方から誘ってくれるなんて思いもしなくて、僕はこれでもかと舞い上がった。

絶対前世の僕が徳を積んでいたに違いない。逆に上手く行き過ぎて今から鉄槌でも降ってくるのではないかと、明日の我が身が心配になる。


「じゃあ良かった」
「でも日高さんの方こそ何か用事とかあったんじゃないの?」
「え?無いから全然大丈夫だよ」


そこまで言ってすずちゃんは「あぁ、強いて言うなら」と続ける。その後の言葉を僕はごくりと唾を飲み込んで待った。


「月島くんと帰るって言う用事くらいかな」


彼女は髪の毛を可愛く揺らして、太陽すら凄むほどの眩しい笑みを浮かべた。


「ひょえ」
「え、大丈夫?変な日本語が聞こえてきたけど」


ふふ、と笑うすずちゃんに「喉の調子が悪いみたい」と変な言い訳を伝える。変なの、と前を向いて歩き始めた彼女の背中を見つめた。