息を吸って、お腹の中心に力を込める。

 あとは教えられた型の通り動くだけ。

「はっ!」

 勢いよく、それでいて力み過ぎずに出来たと思った。


 でも……。


「どうした? 今日はいつもと違って覇気がないな」

 鬼塚先輩にはそう言われてしまった。

「……そう、見えますか?」


 確かにデートのこととかを考えると憂鬱(ゆううつ)で、ため息ばかりをつきたくなる。

 でも表に出すようなことはしていないつもりだったんだけど……。


「はぁ……ちょっと来い」

 重めに息を吐いた鬼塚先輩は、ついてこいとあごで示した。

 黙って付いて行くと外に出るドアの方に向かう。


「鬼塚先輩、外に出るのは……」

 嘉輪の代わりに今日のあたしの護衛をしてくれている正樹君が声をかける。

 あまり離れたところにはいかないで欲しいってことだろう。


「心配するな。出てすぐのところにいる」

「そうですか。分かりました」

 そうして正輝君も納得したので、あたしはそのまま鬼塚先輩について外に出た。


 外は曇り空で少し湿気もあった。

 もう少ししたら雨が降るかもしれない。


「ちょっと座れ」

 出てすぐの石段になっている場所に促されて座ると、鬼塚先輩も隣に腰を下ろした。