まるで檻の中に閉じ込められたような気がした。志麻さんの腕の中で、私は震えながら言葉を紡ぐ。

「だって、親の決めた相手となんて、嫌だったから……」

「馬鹿なの?俺がお前を選んだんだけど」

「でも、嫌なの!普通の人と、普通に恋して、普通に結婚したい……」

「ふ〜ん。でも、もう離すつもりないから。一緒に来てね」

私を話した彼は、先ほどの冷たい無表情から打って変わって花が咲いたような笑顔を見せていた。そんな彼に私は手を掴まれている。父の時のように振り払えない。まるで、手錠をかけられたかのように……。

「仕事、在宅勤務なんだっけ?それなら続けてもいいよ。でも今日から俺と一緒に住んでもらう。結婚式場と新婚旅行先、家に帰ってから決めようか」

何で在宅勤務しているって知ってるの?そう聞きたかったけど、聞くなという無言の圧力のせいで口を開けない。彼に引きずられるように連れて行かれ、マンションの前に止まっていた車に乗せられる。

婚約者から逃げられたと思った幸せな生活は、たった一年で崩れてしまった。