「紬よ。
 何故、テントに居ない」

 慌てて外で、みなの訓練を見学していると、王子が訊いてきた。

「いや……なんかいろいろありまして、はい」
と紬はよくわからない返事をしてしまう。

 その足許で、王子はちょこちょこ歩きながら言ってきた。

「しかし、最近、我々が勝利を続けているので、同じような布製の人形を使う軍が増えてきたようだ。

 格好は悪いが、壊れてもすぐに修繕できると気づいたようだな」

「そうですか」
と言った紬が少し考え、

「火を放ったらどうですか?」
と言うと、

「火を?」
と訊き返される。

「火のついた矢を放てばいいじゃないですか。

 布だから、よく燃えますよ。
 次々燃え移りそうだし」

 すると、何故か近くで訓練していた兵士たちまでもが動きを止める。

「……おそろしいな、紬様」

「将軍より容赦がないぞ」

「紬様が敵に回られたら、我らも火をかけられるのだろうか」

 ひそひそと怯えたような様子で話しながらこちらをチラチラと見る。