───ガチャッ……

「おっ、颯真おはよ〜」


 ドアを開けた瞬間、緩い挨拶が聞こえてきた。


 その声の主は見なくても分かるくらい、聞き慣れた声だ。


「おはよう、藍斗」


 言いながら机の上に荷物を置く。



 こいつ、一宮藍斗(いちのみやあいと)


 俺が素を出せる数少ないやつで、一宮学園の時期跡取り。


 無造作にセットされた焦げ茶の髪、笑うとエクボが出来る優しい爽やか系紳士。そう学園の女子から言われている藍斗。


 運動神経も良く、毎回テストでもトップ10をキープしているし、本当に良い奴だから男女問わず人気がある。



「はい、これがチェックしておいてほしい資料。俺はもう目通してあるから後は颯真のサインだけ」


「分かった、チェックしておく。……式そろそろか?」


「うーん、そろそろ行こうかなー」