「……それでね。俺、華音にすすめたい小説があるんだけど……」
「えっ、気になる!圭くんがおすすめしてくれる小説、いつも面白いもん」
こんな会話が聞こえてくるくらい近づいたのに、華音は話に夢中なのか気づかない。
あーぁ。何そんな嬉しそうな顔してんの?俺の方向けよ。
なんて言う、俺の中の黒い部分が見え隠れする。
「じゃあ、今度2人で…………「華音」」
無邪気に話す華音にも、きっと今から華音を誘おうと思っていたであろう男にも耐えきれなくなった俺は後ろから華音を引き寄せた。
細くて白い腕を取り、華奢な体を後ろから抱きしめると、甘い香りが鼻をくすぐる。
腕の中に閉じ込めた華音は、びっくりしたように肩を大きく揺らし、恐る恐る顔を後ろに向けて確認した。
「っ!?///そっ、颯真!?ど、どうしたの!?」
俺だと分かった瞬間、顔を真っ赤にした華音。
それと同時に、最近では視線を逸らしてばっかりだったのに、久しぶりにしっかり俺の目を見ている。
たったそれだけで俺の心は少しだけ落ち着いた。

