この場所に安らかに眠る人。それは、湊の五つ上のお姉さんだ。
湊の姉ーー梓さんという。梓さんは、今からちょうど七年前、交通事故で亡くなった。享年十五歳だった。
背中まで伸ばした、ふんわりとしたダークブラウンの髪に、湊とそっくりな碧い瞳。赤と青の左右で違う色のピアスがチャームポイントの、近所でも評判になる程の美人。面倒見がよくて正義感が強くて、よく美術のコンクールで章を撮っていた。
その梓さんに湊はよく懐いていて、私もまた、絵が上手でよく遊び相手になってくれる優しいあの人が大好きだった。今思えば、私が絵を描き始めたのも梓さんに影響を受けてのことだった。
今は亡き人に思いを馳せて、心の中だけで呟く。
梓さん。久し振り。こっちは元気でやってるよ。この間ね、クラスに転入生が来たんだ。穂花ちゃんっていうの。凄く可愛くて優しい子。ちょっと喧嘩もしちゃったけど、本当に大好きなの。
他にも沢山、声に出さずに沢山のことを語りかけた。隣で目を閉じている湊も、同じことをしているのだろう。
じゃあ、また来るね。その言葉を最後に、ゆ っくりと目を開け立ち上がる。ふっと目を逸らすように、背を向けてその場を立ち去った。
帰り道でも、お互いに口を開こうとはしなかった。何か一言でも言葉を交わそうとする行為そのものが無粋に思えて、妙にしんみりとした空気を纏ったまま、まだ日が高い道を黙って歩き続けた。
「ねぇ涙衣」
やがて隣を歩いていた湊が、こちらを見ずに小さく呟く。
「僕の為に、我慢しなくていいからね」
いまいち感情を読み取れない無機質な表情。抑揚の乏しいか細い声。
どういう意味かと、茶化して笑い飛ばす気にはどうしてもなれなかった。
湊の姉ーー梓さんという。梓さんは、今からちょうど七年前、交通事故で亡くなった。享年十五歳だった。
背中まで伸ばした、ふんわりとしたダークブラウンの髪に、湊とそっくりな碧い瞳。赤と青の左右で違う色のピアスがチャームポイントの、近所でも評判になる程の美人。面倒見がよくて正義感が強くて、よく美術のコンクールで章を撮っていた。
その梓さんに湊はよく懐いていて、私もまた、絵が上手でよく遊び相手になってくれる優しいあの人が大好きだった。今思えば、私が絵を描き始めたのも梓さんに影響を受けてのことだった。
今は亡き人に思いを馳せて、心の中だけで呟く。
梓さん。久し振り。こっちは元気でやってるよ。この間ね、クラスに転入生が来たんだ。穂花ちゃんっていうの。凄く可愛くて優しい子。ちょっと喧嘩もしちゃったけど、本当に大好きなの。
他にも沢山、声に出さずに沢山のことを語りかけた。隣で目を閉じている湊も、同じことをしているのだろう。
じゃあ、また来るね。その言葉を最後に、ゆ っくりと目を開け立ち上がる。ふっと目を逸らすように、背を向けてその場を立ち去った。
帰り道でも、お互いに口を開こうとはしなかった。何か一言でも言葉を交わそうとする行為そのものが無粋に思えて、妙にしんみりとした空気を纏ったまま、まだ日が高い道を黙って歩き続けた。
「ねぇ涙衣」
やがて隣を歩いていた湊が、こちらを見ずに小さく呟く。
「僕の為に、我慢しなくていいからね」
いまいち感情を読み取れない無機質な表情。抑揚の乏しいか細い声。
どういう意味かと、茶化して笑い飛ばす気にはどうしてもなれなかった。

