涙色に「またね」を乗せて

「何その飴」

横から覗き込んだ湊が、興味深々そうに手の中のそれに視線を向ける。


「前公園で小さい子から貰ったんだけど、何か妙に癖になって。最近ずっとストックしてる」

「お前子供相手にカツアゲしたのかよ」

「してねえよ!」

え、してないの? と湊が目を丸くする。こいつらは一体、私を何だと思っているのか。いくら何でも失礼過ぎる。何が悲しくて、子供から飴を強奪しなきゃならんのだ。


「どんな味?」


唯一私を犯罪者扱いせずにいてくれた穂花ちゃんが、ふんわりと愛らしい笑顔で尋ねてくる。やっぱり彼女は私の天使。というか最早女神様だ。

「うーん。フルーツ牛乳の牛乳抜きみたいな?」

「ごめん。全然伝わらない」



半強制的に、この会話は終了となった。


しかし、僅かな退屈すらも忌み嫌う高校生がこの程度で黙り込む訳も無く、会話内容はカラオケに飛び火した。


「そういえば、私カラオケ行くの久し振りかも。皆は何歌うの?」

「んー、色々かな。時と場合による」

「お前はどうせ九十年代の曲ばっかだろ。あ、湊。後でデュエットしようぜ」

「え、やだよ」


ぽんぽんとボールを投げたり投げ返したり、この何気ない日常が、今はとても楽しかった。