涙色に「またね」を乗せて

「嘘、全っ然よくないよ」


イケメンの幼馴染が二人も居るなんて羨ましい! と友達からはよく言われるけれど、実際には毎度毎度面倒事に付き合わさせるわ、喧嘩の度に仲介人にさせられるわ、事あるごとに女子達から恋バナの餌食にされるわで、出来るなら代わって頂きたい。


年の離れた弟を持つ姉ってこんなに気持ちなのかなと、今まで何度思ったことか。


数々の苦労を思い起こし過去の自分を慰めていると、さっきからほぼ無表情を貫いていた湊が口を開いた。



「ーーで、もう帰らなくていいの? あんまりにも帰りが遅いと、親御さんが心配するんじゃない? まだ土地勘が無いから、迷子にでもなったんじゃないかって」



その言葉は、字面だけなら引っ越してきたばかりの彼女を気遣っているとも取れるけれど、声のトーンも表情も酷く冷たくて、邪魔だから早く帰って欲しいという本音を隠そうともしていなかった。


「え……」


戸惑う穂花ちゃんをちらりと見て、あぁまたかと溜息をつく。



「湊、心配する気持ちは分かるけど、そんなにきつく言わないの」


さり気なく穂花ちゃんにフォローを入れつつ、湊のことをたしなめる。