涙色に「またね」を乗せて

「別に嫌いでは無いですよ。むしろ愛してます。お嫁に貰いたいくらい」

「それはそれでどうなんだよ」


ははっ、と呆れ笑いの片桐先生だが、鋭い眼光は少しも緩んではくれない。


もしかしてこの先生は、私が穂花ちゃんを虐めているとでも思っているのだろうか。

どうしましょうと少し考え、数学の問題すらろくに解けないポンコツな頭に今の片桐先生を納得させるだけの秀逸な言い訳など思い付かず、誤魔化すのは早々に諦めた。

「私が何でこの学校志望したか分かります?」

「……は? いや、分かんねえけど」

先程とは打って変わってポカン顔の片桐先生。当然といえば当然か。正直、ここから先に続く言葉は意地でも口にしたくなどないのだが、虐めの冤罪と天秤に掛け、数秒のうちに覚悟を決めた。



「……好きな人追っかけて来たんです」



早口で言った言葉は、しっかりと聞き取ってくれたらしい。


「……へ?」

こちらが唖然とする程の間抜け声が返ってきた。


「まぁその、あれですよ。その……、好きな人? と一緒に居る為にあれだけ努力して、やっと掴んだ日常だったのに、それをぽっと出の美少女転入生に壊されちゃうんじゃないかって不安になって。まぁ、痴情のもつれって奴です」