涙色に「またね」を乗せて

「教えてくれてありがとうございました。じゃあ、私はもう帰ります。さようなら」

「まぁ待てって」


席を立とうとした私を再び座るよう促した先生は、少し言葉を選ぶような素振りを見せて、その所為で説教を待つ子供のような、嫌な緊張感に襲われる。

背中がじっとりとした汗で湿り、喉がカラカラに乾いていく。バクバクと心臓がのたうち回り、全身が強張っていくのを感じた。

やがて考えても無駄だと悟ったのか、眼鏡の奥の眼光を鋭くさせ、絶対に逃がすまいと目線だけでその場に留まらせようとしてきた。



「単刀直入に訊く。お前、愛葉のこと嫌いか?」


あまりにも直球過ぎる問いに、苦笑いを漏らすしかなかった。


「本当に単刀直入ですね……。もっとこう、オブラートに包むとか出来ないんですか?」

「俺、そういうまどろっこしいの苦手なんだよ」


そう言えば、この人はそういう人だった。


いつも真正面からぶつかってきて、困っている人を見捨てようとさえしない。愚直というか何というか、その潔さが生徒の好感を買っているけれど、残念ながら湊はそこが嫌いだと言っていた。私はどちらかというと前者寄りだが、今なら湊の気持ちも分かる、気がする。

よく言えば真っ直ぐ、悪く言えばデリカシーが無い。そりゃあ、ここ最近の穂花ちゃんに対する態度が褒められたものでは無いことくらい自覚している。でも、友情関係に担任が口出ししてくるのは如何なものか。小学校じゃないんだから。