涙色に「またね」を乗せて

「はぁ……」



声にならない溜息を吐き、嫌な感情を外に追い出そうとする。


とはいえ、たった一度息を吐いた程度では胸中に渦巻く煙が浄化されることは無く、今全身を濡らす雨が天気雨であることを気付かせる以上の役割を持たなかった。

さっきまでは曇っていたのに、と思いながら傘を差す。もう既に濡れ鼠と化してしまっているけれど、まあ無いよりはマシだろう。

青々と茂る草木を瑞々しく濡らす翠雨を、更に太陽が燦々と照らす。雨の中に確かに感じられる風情は、花より団子派の自分には関係の無いことだ。



最近、あの二人の関係が上手くいっていないのには薄々勘づいていた。



女の喧嘩に口出しするとロクな目に遭わないと、いつかの涙衣が言っていた。それを鵜呑みにしていた俺は、特に何を言うわけでもなく、いつも通りの日常を送っていた。本当に喧嘩だったのか。それすらも考えずに。


時間の解決に甘えていた、というのもあるのかもしれない。時間の解決に任せられるくらいの些末な出来事だと、軽く考えていたというのもあるのかもしれない。