いつの間に雨が降っていた。髪や制服がずぶ濡れになる。まさに土砂降り。雨の匂いが強くなって、額に濡れた前髪が張り付いた。
それなのに、律樹の瞳は激情一色に染まっていて、吸い付けられたように目が離せなくなる。
純粋な怒り。そんなものを生まれて初めて向けられて、それでもなお歪んだままの性根には、嫌気が差すどころか面白みすらも湧いてきた。
よかったじゃん、と声には出さず嫌味っぽく呟く。穂花ちゃんには、こんなにも自分を大切に想ってくれる人が居る。律樹が鈍感過ぎるだけで、その想いは彼女が向けているものと同じかもしれない。それが、どうしようもなく羨ましい。
羨ましいのは穂花ちゃんだけじゃない、律樹もだ。
真っ直ぐと誰かを想うことが出来る。私には成し得なかったこと。律樹はいつもそうだった。馬鹿っぽく見えて、本当は誰よりも純粋で、誰かの為に本気で泣いたり怒ったり出来る。私とは大違いだ。
どのくらいそうしていただろう。やがて胸倉が解放され、冷静さを取り戻したのか、あるいは言っても無駄だと悟ったのか、律樹はその場から去っていった。
痛い雨が降り注ぎ、俯いてその場に立ち尽くす。世界に私一人みたい。うっすらと聞こえる喧騒の中、ぽつりと言って笑おうとして、笑えなかった。
ぐっしょりと濡れた鞄には確か折り畳み傘が入っていた筈だけど、取り出す気にはなれなかった。
ねぇ、律樹。と、心の中で語りかける。
あんたはさっき、私は何でも持ってるって言ってたけどさ、それ、勘違いだよ。
私は何も持っちゃいない。だって、今まで持っていたものは、とっくの昔に捨てたんだから。
それなのに、律樹の瞳は激情一色に染まっていて、吸い付けられたように目が離せなくなる。
純粋な怒り。そんなものを生まれて初めて向けられて、それでもなお歪んだままの性根には、嫌気が差すどころか面白みすらも湧いてきた。
よかったじゃん、と声には出さず嫌味っぽく呟く。穂花ちゃんには、こんなにも自分を大切に想ってくれる人が居る。律樹が鈍感過ぎるだけで、その想いは彼女が向けているものと同じかもしれない。それが、どうしようもなく羨ましい。
羨ましいのは穂花ちゃんだけじゃない、律樹もだ。
真っ直ぐと誰かを想うことが出来る。私には成し得なかったこと。律樹はいつもそうだった。馬鹿っぽく見えて、本当は誰よりも純粋で、誰かの為に本気で泣いたり怒ったり出来る。私とは大違いだ。
どのくらいそうしていただろう。やがて胸倉が解放され、冷静さを取り戻したのか、あるいは言っても無駄だと悟ったのか、律樹はその場から去っていった。
痛い雨が降り注ぎ、俯いてその場に立ち尽くす。世界に私一人みたい。うっすらと聞こえる喧騒の中、ぽつりと言って笑おうとして、笑えなかった。
ぐっしょりと濡れた鞄には確か折り畳み傘が入っていた筈だけど、取り出す気にはなれなかった。
ねぇ、律樹。と、心の中で語りかける。
あんたはさっき、私は何でも持ってるって言ってたけどさ、それ、勘違いだよ。
私は何も持っちゃいない。だって、今まで持っていたものは、とっくの昔に捨てたんだから。

