涙色に「またね」を乗せて

しばらく歩き、そこでふと違和感を感じた。



「………」



歩くスピードを速めると、後ろからついてくる足音も、同じ分だけ速くなる。


おいおいマジかよ。ただでさえ沈んでいた気分が更に落ち込んで、大声で叫びたくなった。


仕方ないので本来歩くべき通学路から道をそれ、人気の多い商店街を通り、そこから更に右に曲がって薄暗い路地裏に入る。


高い建物に遮られ、時折野良猫の鳴き声が聞こえるこの不気味な場所は、夜ならば絶対に近付きたくない。

十メートル程歩いたところで、ぴたりと歩みを止める。間抜けなそいつは、一歩余計に歩いてから立ち止まった。



「何処までついてくる気?」


冷たく言い放ち振り返る。すると、物陰に隠れていた律樹が少し気まずそうな顔で現れた。


「気付いてたのかよ」

「誰だって気付くわあんなの。尾行するなら、もっと上手くやんなさいよ」


で、何の用? 不機嫌を隠そうともしない己に、あ、私女優向いてないわと直感した。突然に進路の幅が狭まり、何とも言えない気持ちになる。


一方律樹はというと、この決して短くはない付き合いの中で、初めて見せる表情をしていた。

眉根をぎゅっと寄せ、思い詰めたような、何らかの覚悟を決めたような、険しい表情。真っ直ぐに向けられた視線の中に私への非難が込められているように見えるのは、決して思い過ごしではない筈だ。