涙色に「またね」を乗せて

「取れるよ。ちょっと待っててね」



木登りには自信がある。昔はよく、上手に登れない湊をてっぺんの枝に座りながらからかって遊んだり、どの高さまで登れるか挑戦してみたりとやんちゃばかりしていた。

今やったら間違いなく野生児扱いされそうだが、この場に知り合いは見当たらない、スカートじゃなくて助かった。


ひょいと立ち上がり、一番低い位置にある枝に右足を乗せる。ぐっと力を入れて左足も乗せ、同じように上へ上へと登っていく。


ふと下界を見下ろしてみると、自分が想像より遥かに高い位置に居ることを知って驚いた。並の人間なら躊躇してしまいそうな高さだが、不思議とそういった感情は湧いてこない。


無事羽を回収して、後はもう降りるだけ。そこで、ふとした悪戯心が湧き上がった。



本当なら枝に足を掛けて慎重に降りていくのが正攻法なのだが、如何せん私はドアホ女王小さい子達に見栄を張りたいという気持ちもあって、ニヤリと唇の端が上がった。



枝の上で姿勢を整え、勢いよく飛び降りる。落下時特有のふわっとした感覚が思いの外大きくて、飛んだ瞬間後悔した。


それでもどうにか受け身の体制を取って地面に着地する。おおよそ軽やかとは言い難い動作だったけれど、子供達から拍手が送られる程度には形になっていただろう。



「はい」


羽を返すと、ピンクのヘアゴムの女の子から、お礼だと言って某日曜午前八時三十分の女児向けアニメのイラストがプリントされた飴を渡された。明日久し振りに見てみようと思った。


貰った飴を口に運ぶ。フルーツ牛乳の牛乳抜きのような、とても不思議な味がした。