涙色に「またね」を乗せて

その日は珍しく、自室の窓が叩かれた。


相変わらず自宅学習には身が入らず、諦めて漫画を読みながらダラダラを謳歌していると、窓の方から微かに硬い音が聞こえてきた。

読んでいた漫画がちょうど山場に突入したところだったので、絶妙に腹が立った。港はいつもこんな気持ちだったのか。反省しなくては。

仕方ないので立ち上がって窓を開ける。途端、窓枠から身を乗り出すようにした湊と目が合って、不覚にも胸が高鳴った。以前はそんなこと無かったのに。やっぱり認めるべきではなかったと、数週間前の自分を恨む。


「何か用?」


胸の内を誤魔化すように不機嫌に告げると、湊は私をーー、というよりは私の部屋を覗きながら楽しそうな声で言った。



「いや、ちゃんと勉強してるかなって」


恐らくは、一年生の頃の成績を踏まえてそう考えたのだろう。そして、ベットに放ったらかしにした漫画を見て、仮説が確信に変わったというところか。

ニヤニヤと意地悪く笑っている様子からすると、ただからかいたかっただけらしい。やっぱこいつ最低だ。噴き上がるマグマよろしく、怒りがムカムカと生成される。冷やかしなら帰ってくれ。