涙色に「またね」を乗せて


「何、これ……」


普段なら絶対にありえない筈の光景に、一人呆然と立ち尽くす。

それはまるで夢のようで、だけどよくあるふわふわと幸福に満ちた夢ではなく、一刻も早く目を覚ましたいと切に願う悪夢の方。


逆に、夢でなければこれは一体何なのだろうか。

穂花ちゃんの恋の行方が気になって、珍しく取り組んだ勉強も全く手に付かず、気晴らしにコンビニに出掛けた仕打ちがこれだった。


何で、あの二人が一緒に、それもあんな親密な空気で話しているのだろう。



偶然会っただけ。そもそも他人の空似だった。実は彼女は、律樹ではなく湊のことが好きだった。


ありとあらゆる可能性が浮かんでは消え、その分だけ穂花ちゃんへの不信感が募っていく。


そして、理性がそれに驚いた。


だっておかしいじゃないか。私は元々、あの二人に仲良くなって欲しかった。それに、もし仮に穂花ちゃんが湊を好きだったとしても、友達ならそれを応援すればいい。動揺する理由なんて、嫌だと思う理由なんてーー。



「っ……」


目を逸らしてその場を走り去る。これ以上、仲睦まじい二人の姿を見ていたくなかった。

胸が張り裂けそうに痛くて、視界が熱いものでぼやけて、ずっと蓋をしていた想いが今更のように溢れ出す。


……私、湊が好きだ。


絶対に認めてはいけないと、心の奥底に封じ込めていた恋心。

でも、今この瞬間に全て水の泡となった。

嫉妬と悲哀でぐちゃぐちゃになった気持ちを抱え、涙で更にぐちゃぐちゃになった顔を拭うこともせずに走っていると、口の中がしょっぱい味で満たされていった。