涙色に「またね」を乗せて

隣の席の高峰湊(たかみねみなと)と、左斜め前の席の木嶋律樹(きしまりつき)


この2人とは、随分長い付き合いだ。


ナチュラルに性格がひん曲がっている湊と、素直で馬鹿で意外と辛辣な律樹と、(大変不本意ながら)ドアホ女王と名高い私は、性格はそんなに似ていない筈なのに、何故か大きな揉め事も起こらずに何だかんだでほぼ毎日一緒に居る。

この二人と居るのはそれなりに楽しいけれど、いい加減美少女の友達が欲しいものだ。


「そういえば、律樹の隣空いてるけど、一人だけ荷物置き場あるってズルくない? ちょっとそこ代わってよ」

教室に入った時から、密かに気になっていたことを指摘する。


「ちげーよ。荷物置き場じゃなくて、転入生が来るんだって」

「マジで? その子可愛い!?」


別に顔面で人を判断する訳ではないのだが、前の席に可愛い子が座っているとテンションが上がる。あわよくば、お友達に立候補したい。

一人妄想を膨らませ男子組をドン引きさせているうちに、ホームルーム回避を告げるチャイムが鳴った。

今年の担任は誰だろう。去年はお爺ちゃん先生だったから、もっと若い人がいいな。出来れば女の人。

またもや妄想に頭を使っていると、教室の扉がガラリと開いた。

期待しながら待っていた先生は若い人ではあったけれど、残念ながら女性ではなく男性だった。