涙色に「またね」を乗せて

だからもう苦しむ必要は無い。その筈なのに、あの日のトラウマが心に沁みついて離れず、友達の顔色を伺い、背中に隠れるような日々を過ごしていた。

そんな自分に嫌気が差して、引っ越しの話が持ち上がった時も、本当は近所に住んでいる祖父母の家から青森の高校に通うという選択肢もあったのに、わざわざ転校するという選択肢を選んだ。

全く違う環境で一からやり直せば、きっと自分を変えられる。そう信じて疑わなかった。人は、そう簡単には変われないというのに。

その証拠に、転校間際に貰ったミサンガを、お守り代わりにずっと腕に巻いている。

思い出さなくていいことまで思い出してしまったら、あまりの情けなさに涙まで滲んできた。


もう、いいや。


こんなもの、全部自分で食べてしまおう。


伝えることも、封じ込めることも出来ないこの想いも、最初から無かったことにしてしまえば、きっと明日からはいつも通り笑えるだろう。

一瞬、懸命に協力してくれた友人の姿が脳裏を過ぎったけれど、それで罪悪感を抱いて考えを改めるくらいなら、こんなことで悩んでいない。

結んだリボンを解こうと手を掛けた時、不意に、後ろから訝しげな声が聞こえた。



「愛葉ちゃん?」




苗字にちゃん付け。私のことをそう呼ぶ人間は、この世には彼一人だけ。