涙色に「またね」を乗せて

「律樹君、人気なんだね」



淡々とした小さな声。ぱっちりした黒い瞳が、今は遠く濁っている。白い顔からは表情がすっぱり抜け落ちていて、相当ショックを受けているのだと容易に想像出来た。


「どうかな。あんなの、動物園の猿に餌やりしてるのと同じでしょ」

「お猿さんって」


穂花ちゃんが小さく笑う。どうにか調子が戻ったと思い安心したけれど、その笑みが意図的なものだと気付きすぐに心がブルーグレーに逆戻りした。


こんな時まで、気を遣わなくてもいいのに。


好きな人の為に作ったお菓子を、いざ勇気を出して渡そうとしたら、他にもライバルが沢山居て、彼と親しいのは自分だけではないと思い知らされた。

そんな状況、私だったらキレるか泣くかの二つに一つだ。もしかしたら、八つ当たりだってしたかもしれない。


「可愛い子達ばっかりて、律樹君も嬉しそう。私なんか、勝てっこないや」

自嘲気味に呟く言葉は、きっと特定の相手に向けられたものじゃない。その証拠に、瞳には誰も映っていない。