涙色に「またね」を乗せて

あのバスケ馬鹿は、意外と女子にモテるらしい。

ひしめき合う女子の群れ。恋情と憧憬と微かな媚びを含んだ視線の先では、栗色の髪がぴょんぴょんと跳ねていた。

ふわりと、律樹の体が浮き上がる。それと同時にシュートが決まり、バスケットボールが床に落ちる。


見慣れている筈の私ですら息を呑む、完璧なフォームだった。



「キャー!」



決して、暴漢が押し入ってきた訳ではない。


律樹のプレーを見ていた子達の、黄色く姦しい歓声だ。


滴る汗を拭いながら水を飲みに体育館裏に出た律樹を、髪型もメイクもばっちりキメた女子達が取り囲む。


「あの、これよかったら……」

「木嶋君の為に作ってきたの! はいどーぞ!」

「お、サンキュー」


その姿は獲物を狙う肉食獣の如し、きっと顔に貼り付けられたスマイルの裏側では、恋する乙女の泥沼の戦いが繰り広げられていることだろう。


一方、その好意の意味もろくに理解していない律樹は、まだガキっぽさの残る笑顔で差し入れを受け取っている。いつも通りの能天気さ。今はそれが腹立たしい。