涙色に「またね」を乗せて

「美味っ」



完成したパウンドケーキを一口頬張って、真っ先に出てきたのはそれだった。


ドライフルーツの濃縮された自然の甘酸っぱさがふわふわの生地に包まれて、それが口の中で弾けて絶妙な味わいが口いっぱいに広がってくる。その様はまるで、自然の宝石箱と言うべきか。

現代国語のテスト平均四十五点の私に謎の食レポをさせてしまう程、穂花ちゃんのパウンドケーキは美味しかった。

しかも、律樹の好みもばっちりと反映させている。あいつは、こういうフルーティーな味が好きなのだ。

その辺りの感想をやや婉曲気味に伝えると、穂花ちゃんは「本当? よかったぁ」と心底安心したようにほっと胸を撫で下ろした。

ふわりと頬を染めているのを横目に、棚の中から引っ張り出した数種類のラッピング袋とリボンを机の上に並べる。


「はい、好きなの選んで」

「え、いいの? ありがとう」


しばらく考え込んでから、穂花ちゃんは半透明のハート柄の袋と、黄色いサテンリボンを手に取った。


「じゃあ、これにしようかな」


慣れた手つきで、リボンを綺麗に結んでいく。

ラッピングを終えたそれは、お店の商品みたいだった。


「律樹君、気に入ってくれるかな」


「きっと大丈夫だよ」


「そうだといいんだけど」



蝶結びにされた明るい菜の花色のリボンを、ほっそりとした白い指が、愛おしそうにそっと撫でた。