涙色に「またね」を乗せて

「どしたの?」

問いかけると、穂花ちゃんは怪訝そうに口を開いた。


「涙衣ちゃんは、作らないの?」


どうやら、淡々とメニューを読み上げているだけの私を疑問に思ったらしい。別に私が作る理由なんて無いのに。と心の中で呟きながらも笑って答える。


「私はいいよ。別に渡す相手も居ないし」


言った途端、ちょっと残念そうな表情をされるから軽く混乱した。


「そっかぁ。一緒に作れたら楽しそうだなぁって思ったんだけどな」


それからまた、遠慮がちに一言。


「湊君には?」



お菓子作ってあげないの?



文脈から察するに、その言葉の続きはこんなものだろう。

何となく予想していた質問にも関わらず、胸がズキリと痛んだ。


「あいつの為に手間暇かけて作ってやる義理は無い」


きっぱりと言った声は、震えていなかっただろうか。

ちゃんと、いつも通りに聞こえていただろうか。


「……そっか」


あまりにもはっきりといったからか、それとも、彼女なりに思うところがあったのか、それ以降、この話題が続くことはなかった。