涙色に「またね」を乗せて

とある休日の昼下がり。


目の前に並ぶのは、薄力粉、ベーキングパウダー、グラニュー糖、卵、バター、ヨーグルト、ドライフルーツミックスといった、パウンドケーキの材料達。



「よし、それじゃあ始めますか」

あの衝撃の告白の後、差し入れに何を作るかを決める為にいくつかの案を出し合って、最終的に簡単でアレンジもしやすいパウンドケーキを採用し、意外なことに穂花ちゃんがパウンドケーキを作ったことが無いと判明したので、私がサポート役に徹することになった。


今のご時世、レシピなんてネットを漁ればいくらでも出てくるし、元々料理上手なのだから私が居ない方が返って作りやすいと思ったのだが、律樹の好みを知っているという理由で両手を合わせて懇願され、断れずに引き受けてしまったのだ。決して味見目的で引き受けたという訳では無い。


誰に対してなのかも分からない言い訳を並べ、予め調べておいたレシピを読み上げる。



「えーっと、まず最初に、バターをハンドミキサーで泡立てる」

「こんな感じ?」

「そうそう。少しずつグラニュー糖を足していってね」

「うん」


バターを手際よく泡立てていく彼女の顔は真剣そのもので、きっと律樹のことを想いながら作っているのだろう。青春だなぁと考えながら見ていると、不意に、何か言いたそうな視線を感じた。