涙色に「またね」を乗せて

私の知っている彼の人物像は、遅刻常習犯のバスケ馬鹿で、正直言って成績はあまりよろしくない。地頭はそんなに悪くない筈なのだが、集中力が続かないのだ。

でもその代わりに、意外とツッコミの切れ味が鋭い。よく食べよく遊びよく眠る、典型的な体育会系。ちなみに、身長はバスケ部の割にちょっと低い。


ここまで出してみたけれど、どうすればいいのかは全く思いつかなかった。というか、律樹は穂花ちゃんのことをどう思っているんだろう。


何処かの誰かさんと違って、少なくとも友好的な目で見ていることは確かだけど、女の子として意識しているかどうかは怪しい。そもそも、あいつの辞書に恋愛の文字はあるのだろうか。



……何か、頭痛くなってきたな。



うーんと唸り声を上げ、ついでに頭も抱え込んで考える。三十秒程経ってから、ようやく一つの案が閃いた。


「差し入れ、とか?」

「差し入れ?」

コテンと首を傾げ、可愛らしい声でオウム返しをする恋する乙女に、頭痛が一気に散っていく。


「うん。男子のハートを掴むには、まず胃袋から掴めってよく言うし。それに運動部の男子って基本食い意地張ってるから」


実際、意中の人に差し入れを渡す女子は多い。蜂蜜レモンとかクッキーとか。貰っている側も満更でもなさそうな顔をしていることが多いし、噂によるとそれが一種のステータスとなっている部もあるのだとか。

「でも、上手に作れるかな……」

自信なさげな穂花ちゃん。けれど、その心配はきっと杞憂に終わるだろう。

「穂花ちゃんなら大丈夫だよ!」



何故ならーー。




前に分けて貰ったお手製の卵焼きが、犯罪的な美味しさだったから。