涙色に「またね」を乗せて

周りに人が居なくてよかった。もしも誰かに目撃された暁には、学校での居場所はおろか人権すらも消え失せてしまう。

少しの沈黙を挟んでから、彼女は言葉を紡ぎ始めた。黒目を彩る長い睫毛が、心なしか震えている。


「最初はね、優しい人としか思ってなかったの。でも、前に体育の授業でさ、男子はサッカーしてたでしょ? 律樹君、大活躍してて。バスケ部なのにサッカーも上手なんて凄いなぁって、それで」

恥ずかしそうに、だけど嬉しそうに律樹の話をする穂花ちゃんを見て、微笑ましいような、羨ましいような奇妙な感情を抱き、勝手に後ろめたくなる。


それを誤魔化す為という訳ではないが、後ろめたさについてはあまり深く考えたくなくて、思考を切り替えて穂花ちゃんの恋愛成就作戦を練り始める。


そうは言っても、彼氏いない歴=年齢の私に出来る協力とは一体何だろう。そもそも、人の恋路に恋愛初心者の私が首を突っ込んでもいいのだろうか。


とはいえ、相談された手前、放ったらかしにするのもどうかと思い、とりあえず脳内に律樹を出現させてみる。