「おー! すっげー!」


律樹の大声が、右から左に抜けていく。



群青色から紫、紅に蜜柑色へと少しずつ色を変えていく空で、綿雲が幻想的な影を作る。西へ沈んでいく太陽が、ビルの隙間からまばゆい琥珀を主張する。

まるで最上級の絵画のような、鮮やかで美しい景色だった。

こうしちゃいられないと、スマホを取り出して横に構える。カシャリ。撮れた写真を確認する。ピンクレモネード色の光が、とても綺麗に映えていた。


「よく撮れてるじゃん。後で僕にも送ってよ」


肩に手を置くようにして、後ろからスマホを覗き込まれる。肩に触れる体温が、布越しに伝わって居心地が悪い。耳にかかる微かな吐息がこそばゆく、不覚にも胸が高鳴った。ときめいて騒ぐ気持ちに蓋をしたくて、景色に夢中になる振りをして俯いた。


遊園地もゴンドラと同じくピンクレモネード色の光に照らされて、まるで桃源郷のような雰囲気を醸し出していた。



ちょっとだけ背伸びをした甘酸っぱい、夢見がちなピンク色。


まるで、恋する乙女の頬みたいだ。溢れだ出しそうなこの想いも、あのジュースみたいに体内で消化出来たらいいのにと、熱に浮かされた思考回路でぼんやりと思った。