涙色に「またね」を乗せて

「ほらいつまでボサッとしてんの。早く次行かないと、時間無くなるよ」


「あだっ」




容赦無く後頭部をぶっ叩かれて、頭の後ろを抑えながら振り返る。叩かれたところがヒリヒリと痛み、涙すら滲んでしまいそうだった。が、マップを広げている犯人が思いの外ノリノリだったので、怒る気がすっかり失せてしまった。



その後、巨大迷路とコーヒーカップを挟んでから、カフェのテラス席で昼食を取った。


「あ、涙の頼んだやつ美味しそう。一口頂戴」

「絶対やだ。欲しけりゃ自分で買いな小僧」


今更関節キスなんぞ気にしたりはしないけれど、期間限定のプレッツェルを分け与えるのは癪だったので、独り占めしてやった。



「じゃあそっちのジュースでいいや」


私が何か言う暇も与えずに、プラスチックの容器が湊の手に吸い込まれていく。

軽いお礼と共に返されたジュースのストローに口を付けて、お行儀が悪いのを承知でぢゅーっと果肉ごと吸い上げる。

気にしていない筈なのに。何とも思っていない筈なのに、林檎とブルーベリーの蜂蜜入りジュースは、酷くぬるい味がした。