涙色に「またね」を乗せて

「ちくしょう、何で私がこんな目に……」



低く落とした声でひたすら「ちくしょう」を繰り返す私を見兼ねてか、穂花ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。


「やっぱり、お化け屋敷やめる?」

「いや、大丈夫でしょ」


阿鼻地獄に慈悲深き天使が垂らしてくれた蜘蛛の糸を容赦無くぶった切ったのは、言わずもがな、ドS帝王の彼であった。

本当は文句の一つでも言ってやりたかったのだが、来る悪夢の所為でそんな気力も沸かず、代わりにぎろりと睨み付けた。ノーダメージなのが実に悔しい。

くそう。そろそろ藁人形と五寸釘くらいは用意しておくべきか、いやでも呪い返しされたら怖いな。なんてお巡りさんに聞かれたら速攻職務質問なことを大真面目に考えていると、あっという間に入口の目の前まで来てしまい、もう恥も外聞もかなぐり捨てて泣き喚いてやろうかと思った。


前方には律樹が、後方には湊が。そして右隣では穂花ちゃんが私の手を握っているという逃げ場のないシステムに、心の底から絶望した。穂花ちゃんに至っては悪意が無いというのが何とも言えない。


もうこうなったら仕方ない。私だってもう高校二年生やんだ。お化け屋敷に絶叫していた子供じゃないんだ。腹括ってやるから何処からでもかかって来なさいよ。むしろ返り討ちにしてやるわ。と妙に勇ましい覚悟を決め、お化け屋敷の門を扉をくぐる。



ちなみに、開始三十秒で完敗した。