涙色に「またね」を乗せて

「楽しかったー! 次どれ乗る?」


すっかり気持ちが昂った私の横で、顔を青くした湊が口元を抑えながらぐったりとベンチの背もたれに寄りかかる。



「もう二度と乗らない……」


その声からはいつもの飄々とした雰囲気は全くと言っていい程感じられず、昔からこうだったとはいえ、流石に心配になってくる。


「あれ、もしかして絶叫系苦手だった?」


無理やり付き合わせてちゃったかな……。と不安そうな穂花ちゃんの問いに、湊に代わって律樹が答える。質問された本人は、とてもではないが返事をする余裕は無かった。


「苦手とかじゃなくて、乗り物酔いしやすいタイプなんだよ」

「そうそう。昔っから三半規管弱いよね湊は。酔い止め、飲んでこなかったの?」


「飲んだ、けど駄目だった……」


この短時間のうちに、辛うじて会話が出来るレベルまでは落ち着いたらしい。が、回復とは程遠い。あのジェットコースター、見た目に反して相当な威力だったらしい。マジックベアーとかいう名前なのに。子熊の形してるのに。



「私、お水買ってくるっ!」



ベンチから立ち上がった穂花ちゃんが、少し離れたところにある自販機に向かって駆けだした。



「え、ちょ、あんまり走ると転ぶよ!」


遠ざかっていく彼女の背中に慌てて声をかけたけれど、本当に届いていたかどうかは怪しい。

少しして、息を切らした穂花ちゃんがペットボトルの水と共に帰ってきた。余程急いで行ったのか、頬がうっすらと色づいている。


「はい、これ」

「……ありがと」


ぶっきらぼうにお礼を言ってペットボトルの蓋を開ける湊が信じられなくて、律樹と顔を見合わせた。

それから五分くらいして、今度は最近評判らしいお化け屋敷の列に並んだ。絶対嫌だとごねた私の主張は、多数決の結果により聞き入られなかった。