涙色に「またね」を乗せて

窓にはカーテンがかかっていて、中の様子はあまり見えなかったけれど、蛍光灯の光が僅かに漏れ出ていたので、恐らくは部屋に居る筈だ。

腕を伸ばして、コンコンと軽く叩いてみる。しばらく待っても部屋の主は出てこない。もしかして、聞こえていないのだろうか。ドンドンドン! 更に強く叩いてみると、ようやく向かいの窓が開いた。


「五月蝿い」


どうやら居留守を使っていたらしい。無駄に整った顔面が、不機嫌そうに歪んでいる。東北地方出身故の綺麗な碧い瞳に私が映り、色素の薄い髪の毛が、さらさらと夜風に靡いていた。もうすっかり見慣れたとはいえ、改めて見るとほんの少しだけ見惚れてしまう。


「で、何の用?」


ご近所迷惑だと思ったのか、顰められた声にハッと我に返る。そうだった。見惚れてる場合じゃない。私には他に、やるべきことがあるんだった。


「あのさ、今度の日曜日って予定ある?」

「先に目的をどうぞ」

「皆で遊園地行くんだけど、湊も一緒に行かない?」

「誰が来るかによる」

「私と律樹と大天使穂花ちゃん」

「断る」


瞬殺だった。