涙色に「またね」を乗せて

「皆で遊園地行くんだけど、お前もどう?」


「皆って誰よ」


「俺と穂花と湊」


「マジ!? 行く行くー! てか、よく湊OKしたな」


一体どんな話術で湊を口説いたのか、そのトークスキルを是非ご教授願いたい。そこそこ長い付き合いの中で初めて律樹に尊敬の念を抱きかけた途端、次の発言によってそれは音を立てて崩れ落ちた。



「いや、まだ誘ってない」



「おい」

駄目じゃねえかそれ。一体何考えてるんだこの馬鹿は。


「だからさ、涙衣の方から誘っといてくれね?」

「いや自分で誘えよ」

「俺が誘ったって来ないだろ」

「私が誘ったって来ないでしょ」

「とにかく頼んだからな! じゃ、切るわ!」

「あ、ちょ、馬鹿っ!」


ガチャ、ツー、ツー。


「ったく、何なんだあいつは」


見事な強引さだった。腹が立ったので無視してやろうかとも思ったけれど、ここで了承をもぎ取って湊を遊園地に連れて行くことが出来たら、二人の仲は更に深まるかもしれない。このチャンス、逃してたまるか。

そんな気持ちで窓を開けると、夜特有のひんやりとした空気がふわりと顔にかかってきた。

私の部屋には何故か窓が二つあって、そのうち一つは、お隣さんでもある湊の部屋の窓と向かい合っている。会話が出来るくらい近いので、急ぎの用がある時にはもってこいだ。時々、暇潰し相手欲しさに窓を叩いたりもする。