涙色に「またね」を乗せて


「……全然、大したことあるよ」



ベッドから出て、湊がチェストの引き出しを開ける。そしてふわりと優しく笑って、慈しむように髪を撫でた。そして、パチンと小さな音がした。


手を伸ばすと、ひんやりとした硬い感触が指先に触れた。それが何かを確認する前に、湊が口を開く。




「一年間、丸々会えないんでしょう? 受験があるから、夏休みとかに戻ってこられるかも分からないし。十二回は多過ぎるよ。せめてその半分にしてよ」



髪に伸びていた手が、するりと頬に滑る。



「涙衣。僕のこと、忘れないでね」


不安げな声が愛おしくて、頬に触れる手をすり寄せる。心地よさに目を閉じて、思わず口から漏れた溜息と共に、私は言った。





「忘れないよ。絶対に」