涙色に「またね」を乗せて

「ねえ」


ベッドの中から声がした。本来なら振り返るべきなのだろうけど、振り返れない。風邪と言うにはあまりにも真剣な、けれど消えてしまいそうにか細い声だったから?



「本当に、行っちゃうの?」



もしトートバックを持っていたら、パサリと
落ちていたことだろう。幸いにもバックは床の上に置かれていたが、それでも近くにあったペットボトルに手が当たって倒れてしまった。慌ててそれを元に戻す。



「……行くよ。行くに決まってんじゃん」



何を当たり前のことを。それに、今更もいいところだ。全然気にしていない風を装って、ずっと無関心だった癖に。


声に出ない悪態をついても、心の奥底では、湊が寂しがってくれていることが少しだけ嬉しかった。それ以上に、湊の傍を離れなければならないことが悲しかった。

一度自覚するとこの時間もとても貴重なものに思えて、こんなところじゃ遠過ぎて、ベッドにそっと腰掛けた。私の手に、湊の手が重なる。



「ね、湊」


小さく息を吐いて、ずっと尋ねたかったことを口にする。


「私が居なくなっちゃうの、寂しい?」

「……うん」

「私が転校しても、ずっと好きでいてくれる?」

「当たり前じゃん。何言ってんの」