涙色に「またね」を乗せて

湊が風邪を引いたと知ったのは、バレンタインの三日後だった。

急ピッチで作業を進めた甲斐もあり、予定より早めに完成したカレンダーをいつ渡そうかと画策して待っていたというのに、教室に姿を見せなかったのだ。

まさか私があげたチョコレートで食あたりでも起こしたのではないかとかなり焦ったけれど、どうやらそうではないらしい。

幼い頃から湊はとても体が弱く、頻繁に体調を崩していた。季節の変わり目やインフルエンザと、数え出したらキリが無い。成長するにつれ体は丈夫になっていったが、それてもまだ病弱な部類に入るだろう。

お見舞いに行くべきか行かないべきか。学校が終わって帰宅して、制服も着替えずにら一人自室で長いこと迷った。

お見舞いにも行かない彼女って一体どうなんだ。でも、病気の時に押しかけられるのも迷惑だろうし、いやでも、でも……。

どれだけ長い間悩んだだろう。やっぱり行かない。と決めたところで、ピコンとスマホが鳴った。

メッセージは湊から。内容は『きて』の二文字。

ぐぬぬ……としばらく唸ってから、トートバックを引っ掴んで部屋を出た。決心が、一瞬で揺らいだ瞬間だった。

家にあったゼリーと水のペットボトルを適当に中に入れ、そしてふと思い出し、さっき降りた階段をもう一度駆け上がる。

そして、机の上に置き去りにしていたカレンダーも一緒に入れた。

渡せるかどうかは分からないけれと、持っていって損は無いだろう。


軽く気合いを入れて、再びその場を後にした。