涙色に「またね」を乗せて

もう何度目になるか分からない、二人だけの女子会。私はクッキーを齧る穂花ちゃんに背を向けて、勉強机に向かっていた。

机の上には、筆洗いバケツや水彩絵の具なんかが乱雑に広がっている。そして手元には、まだ完成には遠く及ばない来年度のカレンダー。

手作りカレンダーのキットなんて、今の今まで知らなかった。日付用の罫線のみが引かれたシンプルなデザインで、その上のL版写真一枚分の余白には、好きな写真を貼ったり絵を描いたりと、様々なアレンジが楽しめる。

絵に関するもの以外何も置かれていない机の上で、コトリと小さな音がした。


「どう? 順調?」

見ると、穂花ちゃんがマグカップを差し出してゆるりと微笑んでいた。カップの中身はホットチョコレート。白いマシュマロがふわふわと浮かんでいる。

そういえば、バレンタインが近いんだっけ。まだ一応は一月の末である筈だけど、スーパーやデパートのお菓子コーナーはそんな甘えたことは言っていない。様々な種類のチョコレートが、商品棚に所狭しと並べられている。

今年はどうしようかと悩むと同時に、己に課せられた締切の近さに軽い焦燥感を覚えた。


「どうかな……。ちょっとギリギリかも。ちゃんと間に合うといいんだけど」


あははと苦笑いを浮かべる。どんなに多く見積もっても、私に与えられた猶予は一ヶ月と少し。引越し準備のことも考えると、もっと少なくなるかもしれない。このままだと、睡眠時間を削ることになりそうだ。

「そっか」


邪魔をしないようにと思ったのか、穂花ちゃんはそれ以上何も言わずに戻っていった。寒空の下わざわざ来てくれたのにと申し訳なく思う反面、客観的な意見を聞けるからありがたいとも思ってしまう。



本当に、いい友達を持ったものだ。