涙色に「またね」を乗せて

どきりと、心臓が止まったような気がした。


思考は単純化されていくのに、脳内には昔の記憶が流れ込む。こういうの、フラッシュバックっていうんだっけ。


沈黙が長引くことに相手の不信感が募っていくことを嫌程実感しているので、どうにか乾いた唇をこじ開ける。



「私も、高校は帰宅部、かな」



ちゃんと、笑えていただろうか。

何の含みもなく言ってのけただろうか。


何事も無かったかのようにフルーツサンドに齧りつき、自分で話題を振ったくせにわざと会話を放棄した。


穂花ちゃんの方もそれ以上は深入りせずに、別のことを話し始めた。



一見何の変哲も無い昼休みはあっという間に終了し、とうの昔に食事を終えて雑談に時間を費やしていた私達は、スカートを軽くはたきながら立ち上がる。


「明日からは、皆で学食言って食べない? ほら、律樹と湊も居ることだしさ」

「その気持ちはありがたいけど、私が居たら、高峰君が嫌がるから」


困ったように笑う彼女に、そんなことないよとは言えなかった。


正直、湊は穂花ちゃんに対してあまりいい印象を抱いていない。だけど、それは穂花ちゃん自身に問題がある訳ではなく、そもそもあいつは、誰に対してもああなのだ。