涙色に「またね」を乗せて

むしろ、普段の姿からは想像も出来ないような憂う目をした律樹は、随分と気弱な声で呟いた。



「涙衣、やっと湊と付き合えたんだろ。それなのにすぐ引き離されんのかよ。あんまりだろ、それ」


今度は回避出来なかった。

幸か不幸か、今この瞬間口に含んでいたのはシェイクではなくポテトで、盛大に喉に詰まらせた。ゲホゲホと咽返りながらも、言葉を発する隙を作ろうと奮闘する。


「ま、待てい。何故貴様がそれを知っている」


「穂花から聞いた。後口調変だぞ。何キャラだよそれ」



動揺してんだよ! と心の中だけで叫ぶ。



「ていうかマジでどうしたの。私と恋バナしたくてわざわざここに誘ったの? 嫌だよ律樹と恋バナとか」

「俺だって嫌だわ。けど、このままって訳にはいかねえだろ」


一体彼は、何処まで聞いているのやら、湊に打ち明けたことまでは穂花ちゃんに話したけれど、その反応は誰にも言っていないから、律樹が知っている筈がない。

いや、そう考えるのは早計かもしれない。たとえ自分が何も知らなかったとしても、湊本人が律樹に話した可能性だって充分に有り得るのだから。


「で? あいつにはもう話したんだろ? 何て言われたんだよ」


少し、返答に躊躇った。自分の中の脆い部分。そういったものを、こいつにだけは見られたくないから。

思春期特有のつまらないプライドだとは分かっている。けれど、そのつまらないプライドが私の自尊心を支えているのは紛れもない事実で、きっとそれは目の前の彼も同じだから。