転校の話を片桐先生にしたら、先生は少しの間呆然として、「そっか。寂しくなるな」と呟いた。
「そんなにですか? どうせ三学期いっぱいはここに居るし、そうでもないと思うんですけど。それに、どっちにしろ来年担任変わるじゃないですか」
「自分で言うなよ……。お前みたいな問題児がいなくなると、自分の受け持ちじゃなかったとしても、寂しくなるんだよ」
それまでは軽口を叩き合っているいたのに、急に神妙な顔つきになる。言わんとすることは分かるが、誰も彼も何故同じことを気にするのだろう。
「……友達には、言ったのか」
「まぁ一応。ダントツで律樹が面白い反応してました」
登校時、律樹に何度目かの報告をすると、あんにゃろは何も無い道で見事に躓きかけ、立ち直ったかと思えば落ちた枯葉に足を取られて電柱に壁ドンするという中々のリアクションを見せてくれた。湊もこれを見習えばいいのに。
「お別れ会的な奴、せっかくだからやるか?」
「嫌ですよ。小学生じゃないんだから」
「だよなぁ」
黒板の前に立たされて、花束を渡されている自分の姿を想像して寒気がした。サプライズはする側なら別にいいが、される側は勘弁願いたい。
「そんじゃあ、後で後悔しないように、精々心残りをちゃんと片付けておけよ」
最後にぽんと、名簿で私の頭を叩いた。失礼しましたと職員室を出て、薄明に染まった廊下を歩く。
窓の向こうに広がる空は、赤みがかったオレンジとブルーが雲の上に溶け合って、神秘的なパープルの影を落としていた。面積の大半を占める壮大な雲の隙間からは、彩度を落とした柔らかな水色の空が覗いている。
こういうのを人は、マジックアワーと呼ぶのだろう。菫の花のようにも思える淡い青紫を紅掛空色と呼ぶと知ったのは、本屋で買った色の名前辞典に書いてあったからだ。
心残りはあるにはあるけれど、そう大したものではない。少なくとも、限られた時間内で全て消化出来る程度だ。
ただ、私が居なくなった後、湊はやっていけるのか。それだけか心配でたまらない。
「そんなにですか? どうせ三学期いっぱいはここに居るし、そうでもないと思うんですけど。それに、どっちにしろ来年担任変わるじゃないですか」
「自分で言うなよ……。お前みたいな問題児がいなくなると、自分の受け持ちじゃなかったとしても、寂しくなるんだよ」
それまでは軽口を叩き合っているいたのに、急に神妙な顔つきになる。言わんとすることは分かるが、誰も彼も何故同じことを気にするのだろう。
「……友達には、言ったのか」
「まぁ一応。ダントツで律樹が面白い反応してました」
登校時、律樹に何度目かの報告をすると、あんにゃろは何も無い道で見事に躓きかけ、立ち直ったかと思えば落ちた枯葉に足を取られて電柱に壁ドンするという中々のリアクションを見せてくれた。湊もこれを見習えばいいのに。
「お別れ会的な奴、せっかくだからやるか?」
「嫌ですよ。小学生じゃないんだから」
「だよなぁ」
黒板の前に立たされて、花束を渡されている自分の姿を想像して寒気がした。サプライズはする側なら別にいいが、される側は勘弁願いたい。
「そんじゃあ、後で後悔しないように、精々心残りをちゃんと片付けておけよ」
最後にぽんと、名簿で私の頭を叩いた。失礼しましたと職員室を出て、薄明に染まった廊下を歩く。
窓の向こうに広がる空は、赤みがかったオレンジとブルーが雲の上に溶け合って、神秘的なパープルの影を落としていた。面積の大半を占める壮大な雲の隙間からは、彩度を落とした柔らかな水色の空が覗いている。
こういうのを人は、マジックアワーと呼ぶのだろう。菫の花のようにも思える淡い青紫を紅掛空色と呼ぶと知ったのは、本屋で買った色の名前辞典に書いてあったからだ。
心残りはあるにはあるけれど、そう大したものではない。少なくとも、限られた時間内で全て消化出来る程度だ。
ただ、私が居なくなった後、湊はやっていけるのか。それだけか心配でたまらない。

