涙色に「またね」を乗せて

本来であれば湊と律樹が行くのが筋であるが、律樹が行くと言い出した時、穂花ちゃんが自分もついて行くと聞かなかったのだ。

よくよく考えてみると、二人は出来たてほやほやの恋人同士。少しの間にでも二人きりになりたいと思うのは当然のことだろう。

二人がかまくらから出て行ったから、必然的に私達も二人きりということになる。周囲から遮断された雪の部屋で、まだ半分程しか減っていない緑茶で唇を湿らせた。買いたての頃より幾分かぬるくなっていたけれど、さほど気になりはしなかった。

二人きりなんてもう慣れっこだが、関係性が今までとは違う分、心臓がそわそわと忙しない。

お菓子ももう残っておらず、手慰みに髪を指先にくるくると巻き付ける。持て余したこの感情を、吐き出す先が欲しかった。

彼氏彼女になったからといって、何もいきなり急展開が起こったりはしない。以前と殆ど変わらない気楽な関係性。ただそこに、時折微熱が零れるだけで。

ほう、と小さく息を吐く。それは白濁としていて、軋むような寒さの冷徹さを教えてくれた。本来なら寒さを口実に身を寄せ合うのが筋だろうが、それにはまだ、羞恥が勝る。


ふと、穂花ちゃんは、私達を二人きりにする為にわざわざ買い出しに出たのではないかと夢想した。勿論、そこに一切の下心が無かったとは言い切れたい。けれど、何にせよ今は絶好の機会なのではないか。

視線を横に向けると、アクアマリンの瞳がかち合った。私の半開きの唇に、どうしたのこ小首を傾げる。その気の抜けた笑みを見られるのは世界中で私だけだと思うと、胸がほんのり暖かくなった。


「あのね……」


「うん」




ごめん湊。と心の中だけで告げてから、声を絞り出す。











「私、転校するの」