涙色に「またね」を乗せて

「涙衣! 律樹! ちょっと来てって!」


楽しそうな湊の声に我に返る。ここ最近の彼はずっとこんな調子で、以前の冷めた雰囲気と比べると、随分と幼く感じる。まるで昔に戻ったみたい。だから余計に、何も言えなくなってしまう。


「んー、何……って、それ、片桐先生?」


駆け寄ると、さっきまでただの雪の塊にしか見えなかったそれは、今や白衣に眼鏡の片桐だるまと化していた。


「やべえ。超そっくり、写真撮ろ」

律樹がスマホを取り出したので、私もそれに倣ってポケットの中を探る。新学期になったら、片桐先生に見せてやろう。



ところで、気まぐれに発揮される湊の謎センスは一体何処で培ってきたのだろう。

少なくとも、中学の頃からその才能は開花されていた。クラスメートから『現代版ピカソ』と呼ばれていたのだから間違いない。

ちなみにその後らあだ名の名付け親はくすぐり地獄の刑に処された。彼のあだ名が『悪魔の子』に改名されたのは、確かそのくらいの時期だった気がする。

大袈裟と笑うこと勿れ。ちょっと想像してみて欲しい。彼とその部活仲間に四肢を拘束され、脇腹やら足の裏やらを同時に攻められる感覚を。

哀れなそのクラスメートは、懲罰そのものよりも腐女子集団からの熱い視線の方が何倍も苦痛だったと供述していた。


今度機会があったら彼女達が具体的にどんな妄想をしていたのか具体的に尋ねてみようと考えながら、せっせと雪をかき集める。そろそろ寒さが身に染みてきたので、かまくらを作ろうと思ったのだ。


その意図を言わずとも感じ取ったのか、現代版ピカソ兼悪魔の子がせっせと手伝い始めた。手伝ってくれるのは嬉しいんだけど、そのスコップは一体何処から持って来たんだい? え、私の分もあるって? あ、ありがとう。