涙色に「またね」を乗せて

そんな私の狂喜乱舞を見守るのは、ダウンジャケットやらマフラーやらでやたらと着ぶくれした湊と、相変わらず寒さのさの字も感じさせない穂花ちゃんと、そんな彼女に情けないと思われないよう必死で強がっている律樹の三名。


「律樹君、寒くないの?」

「あ、ああ! 俺寒いの平気だから!」



震えてんのバレてっからな。



音を立てないよう律樹の後ろに回り込み、ダウンジャケットの隙間にあるものを流し込む。


「そんな貴方に新鮮な雪をプレゼント」

強がりな律樹は声にならない声を上げて悶絶し、涙目でこちらを睨み付けた。


「涙衣っ! てっめえやりやがったな!」


それでも流石は運動部。すぐに気力を回復し、近所の怖い大型犬の如き形相で追い掛け始め、同時進行で作った雪玉を背中に投げてくる。湊と穂花ちゃんの二人は、仲良く雪だるまを作っていた。おい、ちょっとは助けろや。

この二人が仲良くしていても嫉妬も怒りも湧かないのは、互いの想いの丈を確かめ合って、ちゃんと言葉にしたからだろうか。

今までは、飽きる程ずっと一緒に居た。離れることなんて無かった。離れたいとも思わなかった。

梓さんが亡くなった時、もしかしたらいつか私も湊と離れ離れになってしまうんじゃないかと、不安で眠れなくなった夜もある。

それでも、現実と妄想の中には途方もなく高く、そして分厚い壁があると、心の奥底では信じていた。


その壁が、壊れた。