涙色に「またね」を乗せて

もし幸福に味があるのなら、それはきっと夢のように甘くって、ふわふわと柔らかな味なのだろう。


とぷとぷと溢れ出る幸せのシロップが、乾いた胸の内を湿らす。湊の肩に頭を預けると、ふわりと体を抱き寄せられた。

こんな風に触れられたのはひよっとすると初めてで、想像よりも幾分か細く感じたけれど、何故だがとても安心した。



「僕、涙衣の絵好きだよ」


「何それ。絵だけ?」


「勿論、涙衣本人も好きだって。って、これさっき言ったばっかりだよね? もう今日からドアホ女王じゃなくて、ドアホ女神に改名すべきだよ」


「うっさいなぁ、もう」



首に腕を回し、顔を埋める。陽溜まりのような温かさが嬉しくて、ふふっと笑みが漏れた。


いつから、彼を好きになったんだろう。

いつから、好きでいてくれたんだろう。



ここまで来るのに、何度も何度も遠回りしてきた。


沢山悩んで、沢山傷付いて、〝好き〟の二文字を伝え合うのがこんなにも大変なのだと思い知った。



永遠にも思える迷路をようやく抜けて、辿り着いた先の幸せを噛み締める。





けれどその幸福すらも、長くは続いてくれなかった。